君の膵臓をたべたい / 住野よる
この本はタイトルに惹かれて購入した。
これを読み始めた時、本のタイトルが「君の膵臓をたべたい」だったので、ヒロインの山内桜良が死ぬだけの感動の物語だと勝手に想像していた。
しかし、読み進めていくうちにこの本のタイトルの意味を理解し、最後は涙が止まらなくなっていた。
物語は、主人公の僕が盲腸の手術後の抜糸のために病院に来ていた時に、一冊の文庫『共病文庫』を拾ったことから始まる。その本には、彼女の病状が記載してあった。
その本の内容を彼女はクラスメイトには誰一人言っていなかったので、二人だけの秘密ということになる。
その日から、二人は次第に仲が良くなっていく。
二人きりで焼肉、スイーツバイキング、旅行に行ったりと仲が深まってくると同時に、クラスメイトから僕は嫌な噂を流されることとなる。
主人公とヒロインの性格は真逆で、主人公は他人と交流することを極力嫌い、ヒロインは他人といることで常に輝いていた。それで、お互いの真逆の性格が自然とお互いを引き合い、付き合いはしないものの互いに好意を持つようになる。
ヒロインが主人公を好きだったことがわかるのは、彼女が死んでしまった後の共病文庫の中だったのだが、お互いに好きだったことを伝えていたらまた話の流れが変わっていったのではないかと思う。しかし、お互いが好きという気持ちを伝えずに彼女が死んでいったからこそあの感動的な物語になったのだろう。
『君の膵臓をたべたい』というフレーズについてだが、彼女が退院し、待ち合わせのカフェに主人公が着いてメールを送る。そこにこの言葉があった。
彼女をずっと待っていたが彼女は刺殺され、約束していた海に行く事も出来なくなった。
主人公はお通夜もお葬式にも行かなかったが、ある日彼女の家にお参りをしに行った。
そこで彼女のお母さんに携帯を見せてもらったら、最後に自分が送ったメールは開封されていた。
また、彼女も共病文庫に遺書として主人公に当てたメッセージが書かれていた。「君の爪の垢でも煎じて飲みたいな。」というありふれた言葉じゃ駄目で、そんなありふれた言葉じゃ関係を表しきれない、という彼女の考えから、『君の膵臓をたべたい』の言葉が選択されていた。
一度は止まっていた涙が、そのシーンを読むにつれてまた流れ出してしまった。
この小説全体の感想を言うと、「涙」それしか出でこない。
読んでいる途中、ページ数で言うと200ページを超えたくらいから涙が止まらなくなっていた。過呼吸になる程泣いた。小説を読んでここまで泣くのは本当に久しぶりだった。
この本はおそらく僕の本棚にずっとならび、たまに開かれては涙をもたらす作品になると思う。
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